北口雅章法律事務所

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帽子とエプロンで災難を免れた円空仏

小嶋理事長(円空学会)の御書「円空仏入門」の表紙を飾る円空仏は、

岐阜県高山市の地蔵堂の白山神として紹介されているが、山吹部落の観音堂に残されていた白山権現坐像と同じ像であろう

この白山権現坐像に関連して、悲しい逸話がある。
「双六川に沿ってのぼったわれわれは、…『材木岩』で、本流と分かれて北にのぼり、山吹の部落に着く。…山吹部落の代表の方に挨拶して、観音堂へいった。
 粗末なお堂は道端にある。…鍵を開けて、お堂の中をのぞきこんだ。四体あるはずなのに、一体しかない。他の木彫りにまじって、帽子をかぶり、エプロンをかけた白山権現像だけしかない。これ一体ですか、と意外に思って聞いた。
 …… 一人が叫んだ。『また、盗まれたんだ。』
村びとの憤慨もさることながら、上田さんの驚きと落胆、上田さんは、自分の責任でもあるかのように、顔を青ざめ、憤慨した。やはり、役場の近くに収蔵庫を建てないと駄目だ、と何回も繰り返して言った。
 ただ一体残された白山権現の坐像(三九センチ)は、深く帽子をかぶり、大きなエプロンに包まれていたので、盗人は円空仏と思わなかったのだろうか。盗まれた薬師如来像(八七センチ)は、とくに見たい像だっただけに残念でならない。」
(丸山尚一「円空風土記」読売新聞社;昭和49年3月1日第1刷より)

追記 

上掲・白山神が遺されたいた祠については、「観音堂」と「地蔵堂」と二通りに呼ばれることがあるそうで、上掲・写真は、やはり同一の円空仏であることを確認しました。