北口雅章法律事務所

弁護士のブログBlog

弁護士が失踪するとどうなるか。

事務所の掃除をしていたら、昔(昨年)の会報がでてきた。
「愛知県弁護士会から再三にわたる文書送付、架電、FAX、訪問に応答せず、音信不通となった」会員弁護士(51期、以下「Y」という。)の「公告」が出ていた。

弁護士が音信不通(=失踪?)となると、どうなるか。

1.当然、各依頼者から弁護士会にクレームが入り、
  弁護士職務規程35条・36条違反(業務の処理遅滞)に問われる。
  Yの依頼者は、債権者らから提訴されたり、支払督促命令を受けるなど借金の返済に追われたいたようで、Yは、個人再生申立事件を複数受任していたようだが、依頼者にとっては、「頼みの綱」が切れた、ということになる。

2.「依頼者本人特定事項確認等年次報告書」の未提出(規定2条、5条違反)で、弁護士会から文句を言われる。弁護士に提出義務が課せられる当該報告書の趣旨は、要するに、弁護士としては、「マネーロンダリング」には関わっていませんよ、という念書のようなものだ。

3.「一般弁護士倫理研修」の未受講(倫理研修規程2条、5条違反)
 弁護士は、満3年と満5年以降、5年ごとに倫理研修の受講義務が課せられるが、これをサボると弁護士会から文句を言われる。

4.会費の滞納
 会費(各弁護士に課せられる、弁護士会への「上前」「上納金のことである。)を滞納すると弁護士会の収入減につながる、収入源の一つが断たれるので、当然、弁護士会から督促と文句がくる。
 ちなみに、弁護士会のもう一つの収入源は、弁護士会照会を依頼をしたとき、会員弁護士から「上納」させる、照会料(1件5000円)である。

かくて、行方不明となった会員弁護士は、「綱紀、懲戒手続においても弁明書を提出せず、設定された調査、審査期日にも出席しな」い、ということにならざるをえないので、
退会命令」が下る。

淋しい限りだが、

かくて、各弁護士が、弁護士として業務を続けていくために最低限必要となる、所属弁護士会との関わりの範囲が浮き彫りとなる。

司法改革(改悪)が実施される前までは、このような事態は、およそ考えられなかった。51期といえば、旧司法試験世代。受験の苦労が、人生の半ばにしてパーですか。個人再生事件だけでは、事務所の経営を維持することは無理である。
すべて小泉(当時首相)と佐藤幸治(京大名誉教授)=矢口供一(当時最高裁長官)=中坊公平(当時弁護士)らの所業の犠牲者だと考えている。