弁護士のブログBlog
(その1の、つづき)
■応天門の炎上場面
■応天門の北側(会晶門付近)から応天門の炎上をながめる野次馬たち。
真夜中の事件のはずなのに、多く人々が正装しているのは不自然。
■よく見ると、暗闇とドサクサにまぎれて(?)、痴漢をしている軽装の男達も描かれている。
■一転、場面が変わり、謎の男が描かれる。
宇治拾遺物語によれば、清和天皇に「『応天門の放火犯』は左大臣・源信である」と申告した人物、すなわち、大納言・伴善男が、その讒言をした直後の姿ということになる。
しかしながら、大納言・伴善男がどのような根拠から放火犯を特定できたのか不明であり、根拠なくして、清和天皇がそれを信じたとは考えにくい(判官が源信を取り調べたとの記述もない)。
■ここに描かれているのは、「御烏帽子(おんえぼし)直垂(ひたたれ)」姿の太政大臣・藤原良房(右)と清和天皇(左)。
宇治拾遺物語によれば、良房が清和天皇に対し「(伴善男が)『応天門の放火犯』は左大臣・源信であるとの申告したのは、『讒言』だから、源信を無罪放免にせよ。」と奏上したことになっている。だが、何故、良房が善男の申告をもって『讒言』だ(源信が無実だ)とわかったのか、何故、良房が「清和天皇の頭の中では」善男の申告に基づいて源信を処罰を考えていると知るに至ったのか、放火事件から数日は経っているはずなのに、何故、良房が私服姿で、急いで清和天皇のもとに参上せざるを得なかったのか、物語としては趣旨不明だらけ。
■絵巻では、良房の清和天皇に対する奏上を盗み聞きしている人物が描かれている。
■この「盗み聞きしている人物」の存在は、宇治拾遺物語では語られておらず、絵巻作者の創作であろう。この人物は、右大臣・藤原良相と理解されている。だが、良房が私服姿で緊急に奏上に参上し、清和天皇も髻(もとどり)姿でリラックスした状態にいる(したがって、夜間と考えられる)にもかかわらず、何故に良相が正装なのか?趣旨不明。
宇治拾遺物語によれば、良房が清和天皇に対し「源信の無罪放免」を奏上したことで、頭中将が、清和天皇の審判を伝えに出向くと、左大臣・源信は、束帯をまとって、庭にむしろ(「荒薦(あらごも)」)を敷いて、天帝(「天道」)に無実を訴え祈っており、女房たちは、泣きわめいている。ところが、頭中将から「無罪放免」の審判結果を聞くと、一転、泣き笑いに変わる(「悦び泣きおびたたしかりけり」)。
■絵巻では、頭中将の姿は剥がされて遺っていないが、その随行者の姿が描写部分は遺っている。
■庭で祈る左大臣・源信
■泣き笑いの表情となる、左大臣・源信の妻子
つづく