北口雅章法律事務所

弁護士のブログBlog

小中学校の教育現場の改善のために

片山善博・元総務大臣の講演録「教育は地方自治の最重要課題 ― 教育委員会が本来を機能を取り戻すために必要なこと ―が母校の法曹会誌に載っけられていたので、読んでみた。いろいろ参考になることが書かれてあったので紹介しておく。

 

「教育委員会が本来を機能を取り戻すために必要なこと」は何か?

※講演内容を要約すると…

・学校が不登校、いじめ等の諸問題に対応できていないことの背景に、教師があまりに忙がしすぎる、ということがある。であれば、解決策は二つ。教師の仕事を減らすか、教員の数を増やすかしかない。
・・ 教師の仕事を減らすには、教員委員会がイニシアティブをとって主体的・自主的に動くべきだが、教育委員が主体的に実践する姿勢に乏しいのは問題だ(国=文科省に文句をいわない反面、議会・保護者等の外部からの批判にはナイーブで、内に引き籠もってしまう傾向がある。)。学校行事を重点化したり、簡素化することも考えられるが、そうすると保護者からクレームが出てきて、激越なクレーマーへの対応を担任任せにすると、教員が疲弊してしまい、心が折れそうになってしまう教員もでてくる。そこで、教育委員会が、そのような教員をサポートする体制、例えば、市役所・県庁内に「クレーマー対応を引き受けるチーム」とつくるべきだろう。
・・ 教員の数を増やすには、教師の給与水準を引き上げて、就職希望者を増やすべきだが、教育委員会には財政権がないため、主体的・機動的に処理することができない。しかしながら、教員の多忙化を本気で解消したいのならば、(国が定めた教員の標準法定数の給与にみあう財源については、国が保障しているのであるから[財源の1/3は義務教育費国庫負担金、残り2/3は総務省の地方交付税交付金])、不足人員の教員確保のための給与については、地方自治体で負担すべきであろう。

「教育長と教育委員の品質管理」教育長と教育委員の選任時に、彼ら彼女らに「議会での所信表明、所信質疑」は最低限させるべき。そこで、人格(子ども達の教育に関心があるか?)、識見(教育委員にふさわしい見識があるか?)、責任感(教育委員会の仕事に携わるだけの時間的余裕があるか?)、地域本位に考えられる人かどうかをチェックする。傍聴席には住民がいて、衆人環視の中でそうしたチェックをする。これが教育委員らの「品質管理」の一環だそうな。
※教育委員は、「企業でいうと、社外取締役のようなもの」

「教師の非正規化と教員給与費のネコババ
(注)「ネコババ(猫糞)」とは最近使われなくなった言葉だが、[原義]猫が自分の糞に砂をかけて隠すこと、[転じて]悪行を隠して知らん顔をすること、拾った物を黙って自分のものにすること。
ここで「ネコババ」とは、ベテランの教員が定年退職した後、非正規雇用の形で再雇用・教員補填し、正規雇用より安い給与で働かせ、その差額分の財源(=国から交付を受けている)を浮かせて、府県・市の財源に振り替えること。このようなネコババをすると、非正規雇用の教員ができない渉外事務を、正規雇用の教員だけで割り振ることとなって、ブラック化の要因となり、教員が疲弊する。

「地方教育行政の組織および運営に関する法律」29条の長の意見聴取義務をテコに、教育委員会の意見を市長に申し入れる。

教育委員会議の場をオープンにして、透明性を確保した上で、その場に教員を呼び出して、教育現場の実情を語らせ、各教育委員が、「自分の頭で」考え、「地域本位の視点から」対応を協議する。

 

 

この講演録は、今度の裁判の打合せのとき、名古屋市教育委員会事務局の職員に渡して、市の各教育委員に読んでもらうことにしよう。