北口雅章法律事務所

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外部からは原因不明、名古屋高裁発:長谷川・原審差戻判決!!

朝日新聞によると、「判決書に原審裁判長の押印がなかった」ため、名古屋高裁(長谷川恭弘裁判長)が、民事訴訟規則違反を理由に原判決を原審に差し戻した、という。
法律の素養のない、この意味で「トロい」ヤツ(朝日新聞記者)が記事にすると、表面的なことだけを不正確に報ずるので、事案の実態や原因が不明で、わけがわからない。

 

まず、前提として、「住民が愛知県などを相手に」提訴したと書かれると、問題となった裁判は、「住民訴訟」なのか?、という誤解を招く。しかしながら、名古屋高裁が「上告を受けた」と書かれているので、第一審は簡易裁判所であったことになるが、住民訴訟であれば、行政訴訟であって、簡易裁判所に管轄権はない上、被告は「愛知県知事」になるはずで、「愛知県などを相手に」とはならない。したがって、「住民が」という表記は不適切であり、「○○市に在住の男性(女性)が」と表記すべきである。でないと、名古屋地裁民事9部のK判事がミスったのか?という誤解を招く。

次に、何故、「地裁判決に裁判長の押印がない」などという凡ミスが起きたのか?その原因が分からない。普通は、署名と同時に職印を押捺するのであろうが、署名だけして、職印を押さない理由がわからない。しかも、主任書記官がそのような凡ミスに気づかない理由が分からない。
それだけではない。この地裁判決は、「上告」されているのである。であれば、名古屋地裁が訴訟記録を上級審(名古屋高裁)にあげるときに、首席書記官がチェックするはずであるし、のみならず、名古屋地裁の事務局長(裁判官)及び所長(裁判官)もチェックするはずである。われわれ弁護士の立場からすると、名古屋地裁全体がたるんどるのか?という不審を招くことになりかねない。したがって、朝日新聞としては、上記記事を報道するあたっては、名古屋地裁事務局長に取材して、上記法令違反の事態に至った原因について、その弁明内容をも報道すべきであろう。

また、実は、裁判長が職印の押捺を失念したか否かは、通常、訴訟当事者には分からないはずである。訴訟当事者に交付されるのは、通常、記名がワープロ打ちされて、職印がなく、ただ書記官の謄本証明の職印が押捺された判決書を手渡されるからである。とすれば、恐らく、原判決の手続的瑕疵(裁判長の職印欠如)に最初に気づいたのは、当該事件の配点先である、名古屋高裁民事2部の主任書記官ではなかったか?
 となると、高裁の主任書記官としては、すぐに長谷川部総括のもとに飛んでいき、「原判決には、これこれじかじかの瑕疵がありますが、部長、どうしましょうか?」と相談したに違いない。この場合、長谷川部総括としては、原審・地裁裁判長を部室に呼び出し、厳重注意の上、押印・追完させる選択肢もあったのではないか?と思われる(私の理解が間違っているかもしれないが)。だが、長谷川部総括は、そのような選択肢とらず(?)、「一罰百戒」、訴訟手続法規に忠実に、差戻判決をなし、一審原告(代理人?)が、司法記者クラブにたれ込んだ、といったところか?

真相が外部からはわかないが、後日、機会があれば、内情に通暁していると思われる知人にコソッと聞くことにしよう。