北口雅章法律事務所

弁護士のブログBlog

森友問題 捜査の行方は

学校法人・森友学園(大阪市)をめぐって,大阪地検特捜部が,
前財務省・理財局長の佐藤宣寿(のぶひさ)氏を任意で事情聴取したとの報道があった。

これを受けて,朝日新聞が,主な告発容疑を整理していたが,
解りやすいようで,今ひとつ,(まが)抜けているように思う。

虚偽有印公文書作成罪での告発も検討されているようだ,

園田寿教授(甲南大学法科大学院)は,
①「決裁後も文書を変えていいと認めてしまえば,虚偽有印公文書作成罪の存在意義が問われる」と主張されているようである。しかしながら,(多分,新聞記者の書き方が悪いのであろうが),およそ理論的ではない。また,②「公文書の重要な部分が削除されれば(虚偽有印公文書作成罪が)成立するとの最高裁判例もある」とのことであるが,どの最高裁判例を指しているのかが不可解であし,「削除」を「作成」の概念・語義に含めるのは無理であろう。

私は,このブログでは,公用文書毀棄罪で立件すべきだ,という見解を述べた。
 
<参照>『上野友慈・大阪高検検事長 & 山本真千子・大阪地検特捜部長におかれては,「奥の手」を使うべし!!!』
   https://www.kitaguchilaw.jp/blog/?p=2418

朝日新聞の整理によれば,毀棄の対象文書として
①「財務省と森友学園の交渉記録」と
②「決裁文書」とがあげられているようで,
上記②の方は,告発未受理とのこと。
しかしながら,告発は,あくまで「捜査の端緒」に過ぎず,大阪地検特捜部としては,
あらゆる罪名を検討して,もっとも筋のよい罪名で立件すべきは当然の職責であろう。
本件で最も筋のよい罪名は,上記②の「決裁文書」の毀棄である(①は,決裁文書があれば,付随的な価値しかなく,保存義務について明確な規定がないから立件は困難であろうし,行為者を特定するのも困難であろう。)。

私の,実務感覚と同様の見解をとる元地検特捜部長も,みえるらしい。

これに対し,朝日新聞は,
「改ざん前の文書が財務省に残っていた点を踏まえ,改ざん前の文書がある以上,
(虚偽有印公文書作成罪の)適用は難しい(園田教授)との意見もある。」として,
 先の園田教授(甲南大学法科大学院)の消極的意見を紹介している。

なにいっちゃんてんだかねぇ???。

「改ざん前の文書が財務省に残っていた」ことは,単なる偶然的な一情状に過ぎず,
「決裁文書」に係る毀棄罪の成立(構成要件該当性の問題)とは全く関係がない事情だ。

 もしも「改ざん前の(同一内容の)文書」が残っていれば,虚偽有印公文書作成罪が成立しないというのであれば,文書作成者(犯人)は,文書廃棄の前に,万一の場合に備えて,こそっと本書をコピーして,私的に隠しておけば,後に本書の改ざん(廃棄)が発覚しても,私的に隠しておいたそのコピーを提出することで,刑事責任を免れることになる。しかし,これでは,それこそ「虚偽有印公文書作成罪の存在意義が問われる」ものというべきであろう。

この意味で,園部説の批判は失当である。