北口雅章法律事務所

弁護士のブログBlog

高梨ゆき子 「大学病院の奈落」 を読みなはれ

今日(6月29日),
わが尊敬する「日本外科学会の重鎮」,二村雄次・大先生(名古屋大学名誉教授,愛知県がんセンター名誉総長)が,高梨ゆき子女史を連れて,弊事務所に来てくだすった。医学的観点からも非常に問題の多い名古屋刑務所事件について,彼女が興味をもってくれたとのことで紹介してくれた。

「讀賣新聞医療部」の新聞記者とのことで,検索してみたら,
かの「群馬大学病院・腹腔鏡手術事件」をめぐる一連のスクープで,
「2015年度新聞協会賞」を受賞された方とわかった。
彼女の著作に「大学病院の奈落」(講談社)があると知り,
彼女の弊事務所訪問に備え,
早速,アマゾンで購入し,「精読(?)」した上で,
「待ち構える」(否,「身構える」?)ことにしていた。

群馬大学病院・腹腔鏡手術事故事案は,周知のことと思われるが,
改めて,高梨女史のスクープ記事をもとに紹介すると,

<腹腔鏡手術後8人死亡 高難度の肝切除 同一医師が執刀 群馬大病院>
「群馬大学病院(前橋市)で2011~2014年腹腔鏡を使う高難度の肝臓手術を受けた患者約100人のうち,少なくとも8人が死亡し,病院が院内調査委員会を設定して調べていることがわかった。8人を執刀したのはいずれも同じ医師。同病院ではこれらの手術は事前に院内の倫理審査を受ける必要があるとしていたが,担当の外科は申請していなかった。・・・・」(2014年11月14日 讀賣新聞朝刊東京最終版1面)

<開腹手術でも10人死亡 腹腔鏡と同じ医師 群馬大病院肝切除>
「群馬大学病院(前橋市)で腹腔鏡を使う高難度の肝臓手術を受けた患者8人が死亡した問題で,腹腔鏡手術を手がけた第2外科(消化器外科)による肝臓の開腹手術でも,過去5年間で,84人中10人が術後3か月以内に死亡していたことが関係者への取材でわかった。開腹手術の死亡率は11.9%に上り,全国的な肝臓の開腹の死亡率に比べ3倍という高率だった。・・・・」(2014年12月22日 讀賣新聞朝刊東京最終版1面)

何故このような異常事態が起きたのか?

医学的な問題は,日本外科学会の調査報告を踏まえた,医療事故調査委員会報告書(委員長:上田裕一・名古屋大学名誉教授,日本心臓外科学会理事長)に詳しいが,
その背景事情を,群馬大学医学部内の旧第1外科と旧第2外科との伝統的・構造的な相克・角逐,学長選・病院長ポスト,教授ポスト等をめぐる学内・医局内の複雑な人間模様等にまで掘り下げて取材し,具体的かつ詳細に論じたのが高梨女史の「大学病院の奈落」である。
まさに「新聞協会賞受賞記者が書き尽くした,驚異の医療ノンフィクション」!!
さあ,買った買った!

 まさに久坂部羊著「院長選挙」(幻冬舎)の実録版ですね。
 (参照)https://www.kitaguchilaw.jp/blog/?p=418

 

医療訴訟に携わる弁護士は必読です。

実は,この「群馬大学病院・腹腔鏡手術事件」が起こる約15年以上も前に発生した
腹腔鏡下肝切除術に際して発生した死亡事故について,私は,その手術適応をめぐって裁判で争った経験がある(名古屋高判H16.5.27)。このため,本書は,当時のことをあれこれ思い起こすよすがとなった。