北口雅章法律事務所

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阿部泰隆著 「地方自治法制の工夫」 を読んで一歩前進を!

本日(7月14日),敬愛する阿部泰隆先生(神戸大学名誉教授・行政法)から,御著・新刊の「地方自治法制の工夫   一歩前進を!」(信山社)をご恵贈いただいた。

「努力で一歩前進」を座右の銘とされ,「一市町村一政策運動」を提唱される
阿部先生が地方自治法制に関する諸問題を取り扱った珠玉の論文集である。
(余談であるが,「一市町村一政策」という標語を聞くと,私などは,修習時代に御世話になった大分県で,平松守彦知事が提唱された「一村一品運動(いっそんいっぴんうんどう)」によって,大分の各市町村がそれぞれ1つの特産品を育てたことで,地域の活性化が大いに図られたことを思い起こす。)

ところで,本書の表紙に出てくる写真は,「金塊」の写真である。
すなわち,竹下登内閣「ふるさと創生交付金」(1988年)と称して,どの市町村にも1億円を交付するといった「バラマキ行政」をやったとき,兵庫県淡路島の津名町(現淡路市)が,1億円の交付金を活用して,展示した金塊(のレプリカ)の写真とのことである。阿部先生によれば,「1億円を新規の政策に使わずに,ただ飾っているだけなんて,政策にもならないとの批判も多かったが,実は,直接金塊に触れられることから話題を呼び,観光客も増え,それを飾っていた静の里公園の入場者数も激増した(平成10[1998]年には39万人。2010年まで総入場者数370万人)ので,一歩前進といえる,立派なアイデアだったのである。」とのこと。

今から30年以上も昔,私の大学時代,,法律雑誌「法学セミナー」(「法学教室」だっかもしれない。)に連載されていた阿部先生の行政法演習を図書館にてコピーし,行政法を勉強した。このような一介の弁護士に過ぎない私に,何故,大先生から浩瀚な論文集が送られてくるか? と申せば,その回答は,本書の472ページに出てくる。

名古屋城天守閣の木造再建をめざす河村市長から,議会の継続審議を連発されて困った挙げ句に,「ここらで,議会の審議を打ち切り,『専決』処分をやって,先に進めていいか?」と尋ねられ,安易に「いいよ。」ともいえず,困惑した私は,「予防法学的見地」から,河村市長が『専決』処分に踏み切った場合に,オンブズマンから住民訴訟を起こされても,「敗訴しないために」必要な条件と手続について,阿部泰隆大先生に「飛び込みで」,私的に相談し,御指南していただいた。このときの経緯と阿部先生のご見解が,法律雑誌「自治事務セミナー2017年9月号」に掲載され,この論文が,本論文集にも収録された,という次第。

本論文集は,地方自治法制の諸問題が網羅的に扱われ,地方の団体自治,住民自治を拡充するための「工夫」とヒントに満ちている。地方自治法等は,行政実務に携わる関係者一人一人が,各々創意工夫して活用しないと死文化してしまい,地方は活性化しない。本書は,行政事件・行政実務を扱う弁護士のみならず,各地の地方自治体職員にも,是非読んでもらいたい論文集である。私も,これから勉強させていただきます。

本ブログをもって,阿部先生に改めて御礼申しあげる次第です。

<ちょっと宣伝!>

(本論文集472頁から引用)