北口雅章法律事務所

弁護士のブログBlog

「日本の防衛論」~素人の素朴な疑問

われわれの大学時代は,東京大学法学部には「憲法学の重鎮」芦部信喜教授が自衛隊違憲論者で,誰も反論できなかった。これに対し,小林直樹教授が,本来は,自衛隊は憲法9条違反であるが,その存在自体を否定するのは現実的ではなく,さりとて自衛隊が憲法違反の存在であることを忘れず自覚する趣旨で,自衛隊「違憲=合法」論を唱えたところ,芦部教授から「違憲=合法」論など,法律論として破綻していると一蹴されたように記憶している(記憶違いであれば,すいません。小林直樹先生の学説は,理論的には弱かったが―自衛隊違憲論では芦部教授と一致している―,人間的には私の好きなタイプの先生で,私は,学生時代,ときどき「モグリで」小林先生の講義を傍聴しに行った記憶がある)。

私が大学法学部に進学した年,芦部教授は定年退官され,私が大学で受けた憲法の講義は,東北大学教授から東京大学教授に抜擢された樋口陽一教授(現名誉教授)の「東大での」初講義だった。勿論,樋口教授は,バリバリの自衛隊違憲論者で,自衛隊は,憲法9条2項で「保持しない」と宣言された「陸海空軍その他の戦力」に当たるという常識的な見解の持ち主だった(自衛隊合憲論者は頭が弱いという他ない。自衛隊違憲論をとるからといって,わが国にも個別的自衛権はあるので,直ちに自衛隊の廃止・解散ということにはならないが。)。現在では,自衛隊を正面きって憲法違反だ!と宣言する学説は,なりをひそめているのかもしれないが,私の同期・同クラスだった石川健ちゃんは,大学卒業後,樋口教授の助手に残り,現在,母校の憲法教授をしているようなので,おそらく,彼も自衛隊違憲論であろうと思われる。

 それはさておき,アメリカ海兵隊の「沖縄・普天間基地」移設問題で,沖縄・辺野古への移設に断固反対し,国を相手に徹底抗戦された「翁長雄志知事」(沖縄県)が今年8月8日に逝去された。その翁長知事を偲ぶ,朝日新聞の記事を本日(9月2日),目にした。 「日曜に想う」(編集委員・福島申二)だ。

「詠み人多数」の俳句に
〈八月や六日九日一五日〉
というのがある。八月の六日に広島に原爆が落とされ,九日には長崎に原爆が落とされ,一五日に終戦を迎える,といった日本人にとっての「戦争の記憶」を喚起すべき各記念日の中間に位置する八日に翁長知事ななくなったというのだ。

その一方で,
上記新聞記事は,
〈原爆を知れるは広島と長崎にて日本という国にはあらず〉
と詠んだ歌人竹山広さん(長崎で被爆し,8年前に90歳で逝去)
の最晩年の句を紹介されている。
そして,上記一首は,「沖縄を知れるは沖縄のみにて・・・・」と変奏すれば,
沖縄にも当てはまると指摘されている。
米軍基地を抱える負担,「魂の飢餓感」をひとり沖縄に押しつけたまま,
日本全国の国民99%(沖縄県民1%を除く)が安らぐ図は異様だというのだ。

翁長知事は,2年前,報道機関との懇親会で,
「(アベ)政権の何が一番だめなのか」と聞かれ,
「愛がない」と答えたという

では,
沖縄県民がアベ政権に「愛を」感じるにようにするにはどうあるべきか?
アベ政権が目指す国家は,ハッキリ言って,
北朝鮮・ソ連が攻めてきても,対等に戦える軍事国であろう。
そして,そのようなアベ首相を支えているのが,
“アベ総理の地元”山口県民だろう。
だったら,山口県岩国市にある自衛隊航空基地を「拡張」して,
沖縄県・普天間基地の機能を,山口県・岩国基地に移設すればいいだけのことではないのか?