北口雅章法律事務所

弁護士のブログBlog

続・マイコレクション・円空仏(ENKU)の真贋~「円空学会の見解」発表!!

(前の続き)

いよいよ,残るマイ・コレクションの円空仏の真贋は如何に??

まだまだ,「円空学会」(小島悌二理事長・前田邦臣常任理事)の鑑定は続く!!

 

第2問 これは,竜王ではないか?

 「じゃあ,先生方,これはどうでしょう。私は,円空の竜王だと思いますよ。
  円空のオリジナリティが,実によく出てますでしょう?!」

 といって,私は,自信満々に,私の椅子の横に置いておいた,高さ約80㎝の木造仏を示す。

 写真左が,マイ・コレクション。写真右が,豊田市民芸館の竜王像。

 

が,遺憾ながら,小島先生は,首を縦に振らない!!
小島「いや,この像は,下呂市小坂町にある妙喜堂の善女龍王の模作です。」

(小島「円空仏入門」101頁参照)

 

第3問 関市の愛染明王ではないか?

「先生方,最近,関市で円空仏の盗難事件は発生しませんでしたか?
 関市に,有名な『愛染明王像』ありますでしょう? あの像,大丈夫ですかぁ?」
と思わせぶりに話す私。
「はい。関市の博物館の奥深くに大切に保存されております。」
と自信満々に答える前田さん。
そこで,私が,小島先生らの前で,おもむろに差し出したのが,
下掲・写真の円空作・愛染明王像。


  
北口「先生方,寸分違わず,同じですよ!!」
前田「これは,珍しい『レプリカ』ですね。最近,あまり登場してこなくなった『レプリカ』ですよ。」
 北口「ちょっと待って下さい。関市の所有物でしょう? 地方公共団体が,業者に『レプリカ』を作らせますか?!!」
小島「いや,この愛染明王は,もともとは個人の物でしたから。寄附される前に型取りされたのではないでしょうか。」
 北口「・・・・(絶句)」

 

第4問  「本間正義」先生の認証文言

次いで,私は,(妻との「賭け」での旗色が悪くなってきたので),
いよいよ,「切り札」というほどでもないが,下掲・観世音菩薩像を
小島先生の前に差し出した。

北口「小島先生,この観世音菩薩はどうですか?」
小島「これは,円空の彫りではないですね。見ればすぐにわかりますよ。」
北口「でも,ほら。木箱のフタの裏に『正真円空作 本間正義』と書いてありますよ!」

と,まるで水戸黄門の印籠を差し出すかの如くに,私は,小島先生に,
木箱のフタの裏を示した。が,小島先生は,全く動じなかった。

小島「本間先生の研究対象は,円空だけではないのです。他にもいろいろ研究されてましてね。仮に本間先生の字だとしも,他の物のために書いた箱が,中身だけ入れ替わることはよくありますよ。では,先生は,本間先生が本当に署名されたと思いますか?
北口「だって先生。本間先生は,円空学会では著名人ですが,一般素人には殆ど知られない方ですよ。こんなに凝(こ)ったとことで,他人を騙しますかねえ?」
小島ニセ物づくりは,『本物だ』と信じ込ませないと,売れないんです。この程度のことはやりますよ。モノが違いますから。これは,『円空の顔』(=円空が彫った顔)ではない。」

 

第5問 木の素材を活かす!(か?)

北口「じゃあ,小島先生。この顔はどうですか。円空の顔ですよ。それにこの木の形を活かした彫りは,円空そのものではないでしょうか。

といって,私が次に示した「円空仏」はコレ!

小島先生曰く「いや,円空は,木の形状をこのようには使いません。円空仏は仏様ですよ。やはり,左側の胴部のような木の素材で,右側も木の素材を活かすと思います。」
といわれてみると,なるほど,信仰の対象となる仏像の胴部が凹んでいるのは,明らかにおかしい。やっぱり,贋作かぁ・・・。
だんだん,力がなくなってきた私。

 

第6問 (ちょっと自信があった)「善女龍王」はどうか?

「では,コレなんかどうでしょう。円空の特徴がよく出ていると思いますが」

といって,せめて前田さんに同意を懇請するかの如く,私が差し出した善女龍王像を身見るなり,

「イヤー,これ(私の善女龍王像)は,コレの模作ですね。」と言って,前田さんが私の前に差し出した,スマホの写真には,「薬王寺」の善女龍王像が写っていた。

前田さんのスマホの善女龍王と,私の善女龍王を並べて,記念撮影。

 

もう,後がない!! いよいよ,最後の「切り札」を出すか。

 

第7問 愛知県弁護士会の会報で紹介した「両面観音像」はどうか?

さて真打ち登場。
とうとう追い詰められた私は,「最後の切り札」ともいうべき「両面観音像」,わが愛知県弁護士会の会報にも,堂々と紹介した「両面観音像」を,拝むような気持ちで小島先生の前に差し出した。

どうやら,小島先生は,私の円空関連のブログは,ひととおり読まれていたようで,
既に,私からの「問」を予想して,「答」を準備していたとみえる。
「それね。コレを参考に作られたものだと思いますよ。」
といって,小島先生が,予めコピーを用意されていて,差し出されたのは,下掲写真。

意外や意外。白山神社(郡上市)庚申堂の庚申像だった。
なるほど,原型は,この庚申像ですね。

これで,「全滅」しました。

妻との「賭け」に負けました。

疲れました。でも,勉強になりました。

「専門家」と「付け焼き刃」との違いを感じました。

小島先生,前田先生,いろいろ御教示ありがとうございました。おわり。

 

(追記)

第1問の観世音菩薩と,第3問の愛染明王が,材質からみても,レプリカであることはよく分かりました。それにしても精巧なレプリカだと感心しました。第4問,第5問の各木彫りが贋作であるとのご指摘・炯眼にも感服いたしました。ただ,最後の両面仏だけは,「庚申像」と似てますが,白山神社のそれとは異なり「両面仏」ですし(かなり創作性が加わっている),年代物の木造であることは疑う余地はなく,なお真作の可能性を100%否定することはできないように思うのですが・・・。