北口雅章法律事務所

弁護士のブログBlog

「中途半端に必要なモノ」

中途半端に必要なモノ」であること,
これが,「忘れモノ」,「置き忘れ」の一番の原因だ。

例えば,「傘(カサ)」
終日,雨の降る日であれば,傘を置き忘れることはまずない。
これに対し,雨が降りそうな日に,予防的に傘を持ち歩いたり,
出掛けるときは雨が降っていたのに,途中で雨が止んだりして,
不要になると,途端に外出先等で傘を置き忘れることになる。

さて,私の場合,
「中途半端に必要なモノ」は,「携帯電話(スマホ)」だ。
愚息らのような「スマホ中毒」者は,
常時スマホから目を離さないので,スマホを置き忘れることはなかろう。
ところが,
私(=固定電話派)の場合,スマホについては,
原則,VIPからの緊急連絡しか受け付けず,
殆ど使わず,たまに使うと,必ず置き忘れてくる。

昨晩,事務所からの帰宅途上,事務所にスマホを置き忘れたことに気づいたため,
やむをえず,スマホを取りに戻るべく,事務所に引き返した。
時間のロスは甚だしいが,スマホに何か重要な連絡が入らないか?,
本当に事務所にスマホがあるだろうか? という不安にかられて一晩すごすよりは,手許にスマホがあった方が,精神衛生上はよいから,やはり事務所に戻る。

そして,今朝,自宅を出て事務所に向かう出勤途上
またしても,自宅でスマホを充電したまま,自宅にスマホを置き忘れてきたことに気づく。
そこで,スマホを取り行くため,歩いてきた道を引き返し,またしても自宅に戻る。
スマホなど,殆ど使わないため,あまり必要性を感じないし,
かといって,身に付けていないと気になるので,自宅に引き返すわけだ。
「お帰りなさい」と妻に皮肉を言われるのを覚悟の上でだ。
またしても時間のロスだ。

では,昨晩は,事務所に置き忘れたスマホを取りに,事務所に戻った甲斐があったのか?
というと,実は,意外や意外,こういう時に限って,
VIPからスマホに「困った!」という相談電話があった。やれやれ。

まだまだボケる年ではないはずだが,物忘れが多い割には,
「スマホを取りに事務所へ戻れ!!」という内からの命令,
つまり,第六感が,昨日は,何故か働いたようだ。

ところで,

「中途半端に必要なモノ」は,「物」に限らない。

「知識」だって,「中途半端に必要な知識」など,すぐに忘れる。
「司法試験のため」「受験知識」として詰め込んだ「六法」の知識など,
その典型例だ。
折角苦労して,司法試験に合格しても,受験六法の知識など数年で忘れるし,
それよりも何よりも,基本六法自体が,じゃんじゃん法改正されてしまう。

が,「中途半端に必要な法律知識」ではなく,
「真に必要な法律知識」,すなわち
「真に必要だと自覚的に感得し,○○の趣旨の法文は,確かここら辺りにあったハズだというような朧気な感覚的知識」,あるいは,「○○を正当化する論拠となり得る理論は,確か○○先生の○○の論文に書かれていたはずだというような感覚で思い起こされる,学生時代に精読した論文に関する知識」というのは,意外に覚えているものだ。

このような「加齢とともに発酵して,無意識の領域に沈殿した法律知識」にして,それでも,必要なときに,すぐに感覚的に蘇ってくる類の法律知識をどの程度持ち合わせているか?,ここら辺りが「法律家の『真の』実力」の違いとなって現れるような気がする。