北口雅章法律事務所

弁護士のブログBlog

阿部泰隆著 「日本列島『法』改造論」のススメ

敬愛する阿部泰隆先生(神戸大学名誉教授・行政法)から,
平成30年10月15日発行の御著
「日本列島『法』改造論」(第一法規)をご恵贈いただいた。

「アマゾンのカスタマーレビューを書きなさい!」との御意(おぼしめし)
と拝察したので,いずれ精読のうえ,書き込む予定であるが,
取り急ぎ,ザクッと飛ばし読みしたところで,
ブログ読者にも,紹介・解題・宣伝しておきたい。

阿部泰隆先生は,いわずと知れた高名な行政法学者であるが,
(御弟子さんの中に,交告尚史・東京大学名誉教授もみえる。)
わがブログでも紹介させていただいた,
前著「地方自治法制の工夫」(信山社)が,比較的「堅め」の論文集で,
ちょっと「値が張る」(8000円也)のに対し,
今回の「日本列島『法』改造論」は,値段も手頃な(3000円也),
 「軽め」のエッセイ集で,内容も,盛り沢山。

「『法』改造論」という標題と,
帯に記された「病魔に苛まれている法と政策を蘇生させよ
 Dr.阿部の執刀開始!」という紹介コピーに示されているとおり,
日本の法制度を問題点をズタズタに斬りまくった,痛快,明快,抱腹絶倒の書だ。

阿部先生ご自身も自覚されてみえるように,
阿部先生は,「しばしば変人といわれる」(「はしがき」より)。
しかしながら,「筆者は,とうの昔に御用学者を総撤退し,
大学にも縁がないので,『しがらみ』がなく,文部省批判も含め,
信念に従った発言をしている」(「はしがき」より)ことは請け合いだ。

なかなかいいにくいことでも,ズバッと斬り込む。

例えば,「最高裁判事の人選」

曰く「最高裁判事の人選は,憲法79条により内閣人事となっている。これでは,内閣が,自己を統制する最高裁判事を任命するので,内閣の脅威とならない判事しか任命しない。…。いわば『泥棒が番犬を雇うような仕組み』で,番犬が泥棒に吠えて噛みつくことはない。当たり障りのない事案で吠えたふりをするだけである。…」と。

あるいは,「宗教系私学への国庫助成への疑問」

曰く「…神主,僧侶を養成する大学学部と思われる東京神学大学高野山大学にも助成していること(平成28年私立大学等経常費補助金学校別交付額一覧。http://www.shigaku.go.jp/files/s_hojo_h28a.pdf)は,特定の宗教の布教,教化,宣伝等の活動の援助,助長,促進に当たり,違憲であると思われる。地方公共団体が助成していれば,住民訴訟で争われるが,国が助成しているので,これを争う訴訟制度がない。国民が国家の違法な財政行為を争う国民訴訟公金検査訴訟,日弁連が提案)が制度化されれば,裁判所で論争できる。」

いやはやごもっとも。
(このような訴訟類型を認めると,例えば,防衛費の支出は,憲法違反だという主張も出てくるので,大幅な適用除外が規定されようが,国税納税者訴訟は是非とも立法化してもらいたい訴訟類型だ。)。

目次を拾い読みするだけでも,いろいろなことが書かれていることがわかる。
例えば,・・・
「行政側に肩入れする不当判決,日本はしばしばゼロ審制」,
「憲法改正の課題,最高裁判事の任命権を参議院に」,
「勲章はまっとうな評価を前提にせよ」,
「日本は旧ソ連の終戦後の蛮行をなぜ非難しないのか」
「自殺未遂にも健康保険を適用せよ」
「精神障害者にも不法行為責任を負わせよ」
「過労死企業名を公表せよ」
「介護士・保育士不足は給料を公務員並みに」
「外交官の車に轢かれた犬死を救済せよ」
「パチンコ,ラブホテルの規制は緩和せよ」・・・??等々
一般の方々でも,ちょっと,読んでみようかな?と思える話題に満ちている。

私は,阿部・行政法学の特質
少なくとも「御用学者を総撤退」後の特質は,
「反骨精神とヒューマニズム」にあると理解している。
そして,本書のようなエッセイ集になると,
阿部先生の持ち前の「ユーモア」「毒舌(刺激)」が全開する。

例えば,「第13章 身辺雑記」(347頁以下)では,
「1 バカほど結構儲かるシステム」と題して,
「⑴ タイムチャージ・システムによる車の故障修理」
「⑵ タクシーとのトラブル,地理不案内の運転手」
「⑶ 医師」
「⑷ 弁護士」
「⑸ 研究者」
といった小項目が並らぶ。
ちなみに,「⑶ 医師」(348頁)には,どんなことが書いてあるか?
曰く「医師ほど不思議な商売はない。名医で,患者をすぐに治せば儲からない。
技術料は極めて安いから,技術だけでは商売が成り立たず,無理に検査・投薬をするしかない。患者をゆっくり入院させ,濃厚治療をすれば,あとは助かろうと亡くなろうと,結果に関係なく儲かる。末期となった高齢者に無理な延命治療をして,寝たきり老人にして苦しませて見送ると儲かり,さっさと緩和治療に切り替えると儲けも薄くなる(延命治療はやめよう)。バカほど儲かるといいたいくらいである。…」と。

では,「⑷ 弁護士」の項では,何と書いてあるか?

 弁護士諸君よ!,阿部先生の本を買って読みなさい!!

あるいは,本書には,女性に対して,挑発的なこともかかれている。

「Ⅷ 男損女肥」の項だ。

曰く「(今日では,男女不平等は大幅に改善されたが…)むしろ,活躍できる女性の層(分母)が薄いのに一定数女性を活躍させよ(分子)とされるので,女性差別主義者などのレッテルとか,反発を承知でいえば,ある程度の女性は不当に優遇されているのではないかと感じている。議員になるのも美人の女性が有利だ。私の業界では,もともと分母が少ないのに,女性はいないかというので,限られた分子がいろんなところでモテモテである。これでは能力主義で男が差別されていると感ずる。」
「…,女性優遇しすぎの一面が気になっているのである。反論歓迎。」とある。

さあさ,女性諸氏よ! 
阿部先生の本書を買って読んで,じゃんじゃん反論してさしあげましょう!!
(連絡先は,阿部先生のホームページをご覧ください。)
炎上するほど,女性陣に「本書を購入して」読んでもらえるならば阿部先生も本望でしょう。

 

ちなみに,私のブログは,いろいろな(業界内の)著名人も,ときどき読んでいるもよう。

例えば,岡口基一くん(東京高裁判事)。
岡口くんへ。
貴君の公式ブログでも,阿部先生の本書を紹介してたよね。
もっと,宣伝してやって頂戴。

「成績が『可山優三』の大学生は卒業させるな」
 by阿部泰隆神戸大学名誉教授・日本列島「法」改造論328頁(2018年,第一法規)
ところが,岡口基一は,「優二」だったらしいww
 *仕送りゼロで,学業よりも,生きるのに精一杯だったそうだww
(『岡口基一の公式ブログです』2018-10-6より)

 

ちなみに,岡口判事を援護すべく,
東京高裁の林道晴長官を刑事告発してみえる美和勇夫・大先生から,
本日,初めてメールをいただいた。
「ぶろぐおもしろいですね。」というお誉めのお言葉と,
「職権濫用罪は不起訴になった場合は公務員の犯罪ですから、東京地裁へ付審判の申し立てが出来ます。」  【注】などと,書かれている。確かに。
ヒャー,衰えをしらない過激さ,ですね。恐れ入りました。
美和先生も,本書を読んで頂戴な。

【注】「付審判の申立て」とは,公務員犯罪について告訴・告発した者は,検察官の公訴を提起しない処分に不服があるときは,その管轄地方裁判所に事件を裁判所の審判に付することを請求することができる(刑事訴訟法262条)という制度です。

(ちょっと,宣伝!)