北口雅章法律事務所

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X線検査を受ける仏像たち~運慶・湛慶と快慶のこと

われわれ日本人は,日本史の授業で,
平安末期の源平の争乱のために焼失した寺院の再興に当たって,
運慶・湛慶父子や,快慶らの仏師が,数々の写実的な仏像の傑作を,
造顕したと習う。

運慶の代表作といえば,多くの日本人は,
東大寺・南大門の「金剛力士像」を思い浮かべる。

何故か? 
山川出版社の日本史の教科書の口絵に,その写真が採用されていることと,
修学旅行で奈良に行くと,東大寺に連れて行かれて,否が応でもそれが目に入るからだ。
が,高校の教師が本来,生徒に教えるべきことは,
東大寺は,もともと聖武天皇が鎮護国家の理念のもとに建立した天皇制権威の象徴的存在であったものを,傲る平家一門の中でも,罰当たりな「平重衡(たいらのしげひら)」が,焼き討ちで,大仏殿を焼失させてしまうといった象徴的事件があり,かつ,運慶一門がその再興に寄与したことに歴史的意味があることだ(但し,奈良の大仏と呼ばれる,盧舎那仏座像を再建したのは,重源であるが。)。

が,美術史的には,運慶の傑作といえば,
私は,やはり,彼が青年時代に造顕した円城寺(真言宗)大日如来像(国宝)
だと思う。

ちなみに,運慶の代表作とされる「無着像」(興福寺)は,実は,運慶が監修して,
息子の「運助」に造顕させた作品だと言われている。

方や,快慶の代表作といえば,やはり「僧形八幡神座像」(東大寺)であろか。

さて本題。

先日,瀧山寺(愛知県岡崎市)所蔵の仏像について,
レントゲン検査を実施したところ,新たな発見があった,
との報道があった。

地元・中日新聞(令和元年5月21日)は,
運慶・湛慶の合作と伝えられる「帝釈天」(瀧山寺蔵)にスポットを当て,
レントゲン検査の結果,
その脚部胎内に,「箱のような納入品」があることが,判明したという。
だから,それがどうした,ってんだ??
青木淳教授(多摩美術大)は,「源頼朝の歯のように体の一部が納まっている可能性はある。」と推測するというが,このような考察態度は,学問的でないし,科学的でもない。
そこまでいうのであれば,(瀧山寺の和尚は,上掲写真から明らかなとおり,聖観音像や梵天像に大規模な修復を加えていることは明らかなので)和尚に頼み込んで,「納入品」の中身を取り出した上で,
同寺所蔵の聖観音像から発見されたという「源頼朝の歯」のDNAと一致するか,
DNA鑑定をやってみてはどうか。

方や,同日の朝日新聞は,レントゲン検査の結果,
瀧山寺像の「十一面観音像」の脚部胎内から,
巻物状の納入品が3本発見され,このことから,
当該仏像が「快慶の作品か快慶工房での作品と判断」されるという。

それじゃあ,同じく,仏像の脚部胎内から,納入品が発見されながら,
一方は,運慶・湛慶作で,他方は,快慶作だと,何故,特定・区分できるのか??
どちらの新聞記事を読んでも,なんだか,よく解らない。