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「鳥獣戯画」は,「誰が」如何なる「意図」で描いたものか?

宮川禎一著「鳥獣戯画のヒミツ」(淡交社)を拝読。

ネタバレしてはいけないが,「カエル」,「ウサギ」及び「サル(猿)」をもって,ある特定人物の「隠喩」と考えると,すべてが矛盾なく,合理的に説明がつく
①法然「選択本願念仏集」(浄土宗)を痛烈に批判した著作「摧邪輪(ざいじゃりん)」(華厳宗)で知られる,明恵上人所縁の高山寺に伝わる絵巻物であることを前提として,②釈迦の生涯を描いた絵巻物『絵因果経』と,③玄奘著『大唐西域記』とをヒントに,その関連を読み解く筆者の慧眼は,素晴らしい。

『大唐西域記』にも『絵因果経』にも登場する,「仰向けの白象」(出家前の釈迦に,相撲で負けた相手[提婆達多;ダイバダッタ]が腹いせに殺害した,釈迦の乗り物)は,確かに,「仰向けに倒れたカエル」と相通じるものがある。

 

そして,
「鳥獣戯画(甲巻)」の中の名場面を見て,誰しも抱く疑問が,次々と「腑に落ち」ていく。

Q:ウサギは,何故,サルが泳ぐ川(河)に背面ジャンプをするのか?

 

Q:何故,カエルとウサギは相撲をとるのか? 
Q:カエルは,何故,ウサギの耳を嚙むのか?

 

Q:ウサギは,カエルに投げ飛ばされて,何故,笑っていられるのか?

 

鳥獣戯画の「裏の意味」については,諸説あるが,
宮川説を「ほぼ」全面的に支持したい。

但し,「[第九夜]木に止まるフクロウは釈迦を象徴する」との見解には,その根拠には一部賛同できない。すなわち,宮川説によれば,「サルの僧正」の前の祭壇に祭られた「カエルの座像」の右後方に生えている沙羅双樹は,「釈迦涅槃図」に基づくものであり,そこに描かれている「フクロウ」は,涅槃図では必ず沙羅双樹の枝に掛けられた状態で描かれている「フクロ(袋)」に掛けた「ダジャレ」であり,「カエル」が釈迦であることを暗示している,とのことである。

しかしながら,「沙羅双樹」を意識して描くことで,「カエル」=「釈迦」が暗示されている可能性は否定しないが,ここで描かれている鳥は,「ミミズク」であって,「フクロウ」ではない。したがって,「ダジャレ」(掛詞)というのは無理があるのではないか?

 

 

興味のある方は,・・・