北口雅章法律事務所

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「円空と美並村」

先日,知人が,事務所に美並村・美並村教育委員会発行「円空と美並村」を持参し,譲ってくれた。

この本は,『美並村史』下巻の円空編を要約したものであるが,美並村こそが円空の生誕地であるとの説を採用している。この説は,宗教民族学者である五来重氏(高野山大学教授・大谷大学教授等を歴任)の論考「円空仏 境涯と作品」(昭和43年)を根拠としている。

岐阜県郡上市にある美並村が円空ゆかりの地であることは異論がない。
同村で神職の家系である西神頭家には,円空の初期の神像が遺されており,また,同村は,円空終焉の地でもあるからだ(円空は,同村にある粥川寺の血脈を弟子に譲った後,入定したとされる。)。

だが,円空=美並村生誕説,及びそれを唱えた五来氏に対する批判は厳しい。
特に,私が敬愛する梅原猛先生の五来氏に向けられた批判は,誰よりも激しく,手厳しい。曰く「私は,五来氏の円空に関する一連の著書を読むまでは氏に対して尊敬の念を抱いていたが,今は残念なことに,少なくとも円空研究においては,五来氏は学者ではなく詐欺師であったと思わざるを得ない。と(『歓喜する円空』130頁)。