北口雅章法律事務所

弁護士のブログBlog

亡加藤幸雄(さちお)先生を偲ぶ

私のブログの中で,比較的多くの方に読んでいただいているのが,
「20年後の懺悔 ― 木曽川・長良川等連続リンチ殺人事件 ―」
 https://www.kitaguchilaw.jp/blog/?p=162 だ。

この死刑事件の刑事弁護で御世話になり,このブログでも,私の一存でご登場いただいた,
“ 非行心理学の大家 ”,加藤幸雄(さちお)先生
(元日本福祉大学学長,臨床心理士)。

加藤先生の訃報を新聞でみて,ため息をついたのが昨日。
 そして,今日,お通夜で最後のご挨拶をしてきた。

事務所に戻って,あれこれ仕事を片付けているうちに,12時を回ってしまったが,
しばし,一人で,加藤先生のことを偲んでから,帰宅することにしよう。

朝日新聞の訃報欄では,山口県光市の母子殺害事件だけが紹介されているが,
加藤幸雄先生が「少年事件の心理鑑定」の第一人者であられたことは,
誰も異論を差し挟む余地などないであろう。

加藤先生に書いていただいた前掲事件の犯罪心理鑑定を改めて読み返すに,
「心理鑑定」のために,加藤先生にご尽力いただいた,
彼らの「人格理解」に向けた徹底した調査に裏打ちされた,心理分析には頭が下がる

曰く「…第3に,人格理解のために,C(注:Yoshi),Bの両名に対しては,(名古屋拘置所への)差入れによっても教示可能な質問紙法と投影法の心理検査5種類を実施した。また,Aについては,臨床的人格診断検査による面接者評価法によって心理査定を行ない,彼の考え方を理解するために,彼から借り受けた野村秋介の著作『さらば群青』などを数冊を読んだ。また,面接内容から判断して,人格理解のために郷古英男『うらみの心理』を参考文献とした。第4に,各人(A・B・C)の関係者の面接を行った。Aについては,同棲経験のある■■■■と平成11年3月11日にH法律事務所において,H弁護士(主任弁護人)立会いの下に,約1時間20分面談した。Cについては,平成11年3月19日に,その姉■■■■の神戸の自宅を訪れ,同人と2時間30分ほど面談した。面談中電話でその身内に事実確認なども行ってもらっている。同日,その兄■■■■と高槻市内の喫茶店で約1時間20分面談した。また,平成11年6月19日には,Cの小中学校時代の少年野球チームの監督■■■■と大阪住吉大社近くにある自宅近辺の喫茶店で約1時間半ほど面談した。同日と遡る3月20日には,Cが幼少時に住んでいた10軒長屋とその周辺を徒歩で歩いて環境調査を行った。Bについては,その両親および親しい先輩の■■■■に,Bの親が現在住んでいる羽曳野市の自宅で,全体として4時間近く滞在して面談した。また,平成11年6月19日には,以前Bが同棲したことのある■■■■(旧姓■■)と,大阪の我孫子駅近くの喫茶店で1時間15分ほど面談した。この日は,大阪事件の舞台となった道頓堀川にかかる,道頓堀橋や相合橋付近,宗右衛門町筋その他,彼らが住んだ■■ビルや新太田川界隈も環境調査をした。・・・」

 

平成27年2月に脳疾患で倒れられ,10か月の入院生活を経て,
自宅療養中,ご夫人からいただいた寒中見舞い(平成28年1月)に,
「自分がやりたかった司法分野での福祉活動(司法ソーシャルワーカー)に取り組んでいこうとしていた矢先でしたので,本人の無念さを思うと胸が痛みますが,これからは少しでも回復することを願い,…」と書かれてあったが,
突然の訃報に接して言葉もない。

謹んで御冥福を祈る次第です。 合掌