北口雅章法律事務所

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円空仏をめぐる真贋論争

本日(令和6年4月1日)、円空学会から「円空学会だより」(季刊・第211号)が届いた。早速拝読するに、「研究欄」に三躯の円空仏について、真贋の判断が分かれている(「異見」がある)とのことで、「会員諸氏の意見をお聞かせください。」とある。

 

もとより、小生は愛好家であって、専門家ではない。亡長谷川公茂・前理事長の「動物的な直感(嗅覚?)」には足元にも及ばないし、実物を手に取ってみないことには断定できないが、私見は、以下のとおり。

 

[像1:不動明王(名古屋市・某寺所蔵)]

[結論]模刻と思われる。
[理由]円空仏の背面は、通常、背筋が真っ直ぐに伸びた木を使用しているが、本像の場合、背筋が「脊椎側彎症」ように彎曲しており、違和感がある。もちろん、円空仏には、背部が弯曲した像があるが(例えば、美並村・洞泉寺の庚申像や、下掲・個人蔵[栃木県日光市]の観音像)、その場合は、正面像も弯曲しているのに対し、本像の正面像は弯曲を意図しているようには見えない。

栃木県日光市の観音像(個人蔵

 

 

[像2:阿弥陀如来(静岡市・某寺所蔵)]

[結論]模刻と思われる。
[理由]背面で、蓮華座の上縁が設けられているのに違和感があり、僧衣の襞の線刻が平行しておらず、その彫り方が雑であることにも違和感を覚える。

(上掲・各像の背面のとおり、円空仏の背面の襞は、平行して下降曲線を描く)

 

 

[像3・観音坐像(東京都・個人蔵)]

[結論]模刻と思われる。
[理由]正面像は、非常にレベルの高い模刻であるが、遺憾ながら後頭部の宝印(通説によれば、「ウ・最勝の」)が後頭部の輪郭に沿って墨書されているのには、非常な違和感を覚える。

 「ウ・最勝の」の理解に関する私見は、下掲ブログのとおり。
円空仏の後頭部の宝印は「ウ・最勝の」の意か?(上) | 弁護士ブログ | 名古屋で医療過誤のご相談は 北口雅章法律事務所 (kitaguchilaw.jp)

 

模刻=贋作の難点を指摘すると、より精巧な贋作を作られる危険があるので、上記のような指摘は、あまり公表しない方がいいのかもしれないが…)。