北口雅章法律事務所

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「袴田事件」再審無罪判決まで、…あと4日

令和6年9月26日(木曜)、静岡地裁で、強盗殺人(会社役員一家4名の殺害)と放火の罪等で確定死刑判決を受けた袴田巌さんに対し、再審無罪判決がくだされようとしている。既に最高裁の破棄差戻決定と、差戻後の東京高裁による再審開始決定を経ていることから(つまり、東京高裁が、無罪判決を言い渡すべき、新規かつ明白な証拠の存在を肯認していることが前提になることから)、再審無罪は「当確」である。

これに対し、検察側には控訴できるだけの証拠も気力もないであろう(だったら、「死刑求刑などするな!」とも言えよう。)。

無実の者に対する科刑は「国家犯罪」であり、犯罪よりも犯罪的である。

かかる「国家犯罪」に携わった国家(裁判官、検察官)は、どうオトシマエをつけるのか。国家がいくら刑事補償したところで、袴田さんの失われた人生、失われた正常な精神は回復を望めない。もとより「再審法の改正」は不可欠であろう。しかしながら、それよりも何よりも、再発防止のためには、最高裁長官と検事総長が指揮して、冤罪を生んだ複合的な原因を解明すべく、各々、検証委員会を立ち上げるべきであろう。

個々の裁判官や、検察官の「能力不足」では説明のつかない、構造的な問題はないか?を徹底的に洗い出してもらいたい。

1967年2月当時、公判が始まったばかりの頃、袴田さんが母親に宛てた手紙が、讀賣新聞に掲載されていた。

たぶん、この手紙は、証拠には出ていなかったであろうが、この手紙の内容、筆致をみただけで、冤罪だとわかる。朴訥・実直な元ボクサーが、神に誓って、無実を訴えている。真犯人は「僕を清浄でない状態」にしている、などという仏教徒的な観念を母親に訴えている。

 起訴後になって、「みそタンクから『(血痕が付着した)5点の衣類』が発見された」という、ふざけた証拠を出してきた、警察官に対し、「おかしいだろ」といえない検察官、捜査機関の証拠構造に疑問をいだかないような裁判官は、「社会常識を欠く」と言ったら言い過ぎか(袴田さんが真犯人であれば、確実に発見される場所にして、自分が最も疑われる可能性のある場所、つまり「みそタンク」などに有罪証拠を隠すわけがない。)。