北口雅章法律事務所

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精神科医療の秘訣

元精神科医,兼内科医の義伯父(妻の伯父)から,毎月,「よもぎ会通信」なる機関誌が贈られてくる。

義伯父は,実家の医院をご子息(医師)に明け渡し,医師をリタイアした後は,郷里を出て,学生時代を過ごした東京に移住しつつも,認定NPO法人を主宰し,精神障害者の生活支援に携わってみえる。

機関誌に書かれていることを読むと,精神科医(プラス内科医)としてのスタンスが滲み出ている。

曰く「良い医療の秘訣は,患者を尊重することです。その前に,医療の全てが患者のためにあることを再認識することが肝要です。医師も家族も患者を取り巻く環境の一要素なのです。病いは,愛に満たされた環境の中で癒やされるのです。

 精神科の医療は,患者を医師や親の都合のよい病状に仕上げることではありません。医師や親が良し,と考えることを患者に押しつける前に,先ず,患者の話をよく聴き,気持を理解し,受け止め,その気持を尊重することが大切なのです。そこには何の強要や無理があってはならないのです。・・・」

「 たとえ自分の子供が精神病であっても,病いを抱えながら苦しみに耐え,懸命に生きている,その子を尊敬する気持こそが大事なのです。最も辛い思いをしているのは患者自身です。我が子といえども,病気ではあっても,独立した人格をもった存在として認めるべきなのです。これは医師にとっても同じです。統合失調症の患者を,畏敬の心をもって受け容れ,愛によって包み込んで,自由の中に解き放てば,多くの病いは快方に向かうでしょう。・・・」

「・・・今日を明日のための手段にするのではなく,入院している今日,この日を潤いのある,ゆったりした日にすることこそが病いを癒やす近道ではないでしょうか。日本の精神病院の入院生活はそのようなものになっているのでしょうか?」

 

私こと,先般,ある精神病院を裁判で訴えた。「希死念慮をもつ鬱病患者の自死」事件という典型的なパターンだ。精神病院の管理責任を認める裁判例は必ずしも多くはない。だが,義伯父の上記エッセイを拝読した限りでは,少なくとも,「(医療保護)入院している今日,この日を潤いのある,ゆったりした日」をすごしていれば,あのような最期はありえなかったのではないか,と思い,一石を投ずることにした次第。