北口雅章法律事務所

弁護士のブログBlog

離婚率が上昇する理由

昨日の出勤途上,偶然出くわした年輩弁護士から,
「裁判所の事件が減ってきているという話は聞くが,最近は,どのような(裁判)事件が多いのか?」と尋ねられた。私は,医療過誤事件と行政事件に重点を置いて活動をしているので,全体的なことは知らないが,「やはり不倫がらみの離婚事件と,時間外労働などをめぐる労働事件が増えているのではないでしょうか。」と,個人的な推測・意見を述べた。

では,何故,離婚事件が増える,あるいは,増えたと思うのか。

昔,弁護士会が手配した法律相談所にて法律相談を受け付けていた時代,
もちろん離婚相談は,一定の比率で必ずあったが,何故,近頃,増えた(増えるであろう)と推察するのか。弁護士としての「肌感覚」だけから,直観的なことを話してしまったのか?,あるいは,・・・?と,考えをめぐらせてみると,・・・
昔,先輩弁護士(元裁判官)からうかがった,来栖三郎先生(東大・民法教授)の箴言,「結婚は『錯誤』によって成立し,『忍耐』によって維持される。」と,先日,朝日新聞に掲載されていた,下掲・至言が思い浮かんだ。

 

つまり,「経験則」として,

異性との交際経験が少ない男女が(特に,お互いに未だ精神年齢が若くて,経験の乏しい男女が),比較的「短い交際」のうちに,「最善の希望」をもって結婚に至ると,
不幸(幻滅)に至る

要するに,鷲田清一先生の上掲「折々のことば」の中にある
「幸福もきっとそう。」は,
「結婚もきっとそう。」
置き換えることができるのだ。

しかも,最近は,「忍耐」を持続するために必要な,(核家族化後の)社会的なセーフティーガードも機能しなくなった。
「日本人の忍耐力・包容力の低下」と,
「日本社会における,女性の経済的自立」だ。
すなわち,男女は,お互い「結婚相手のワガママ」を我慢できなくなったし,経済的に自立できる女性は,離婚を躊躇しない。

では,熟年離婚はどうか?
やはり,女性が「亭主の定年までは我慢しよう。」と「忍耐の範囲」を限定し,目標を持つことで,『忍耐』を一定期間,維持できるのであろう。

 

(本ブログと全く関係ないが,昔の「笑い話」を思い出した。)

○○年前,高校3年生のとき,英語の試験問題で,
「現在,アメリカでは,離婚率が上昇している。・・・」英作文せよ
という問題が出たことがあった。親友のS君(現,某国立系大学法学部教授)は,「離婚率」という英単語が思い浮かばず,できなかったようで,放課時間に,私とN君(現名古屋大学教授)が立ち話していると,「君たち,『離婚率』の英作文できたか?」と聞いてきた。われわれが,「divorce rateだろ」と答えると,彼は,一瞬,焦った表情を顔に出したが,翌日,苦笑いしながら,話してくれた。「自宅で,母(調停委員)に『離婚って,英語で何ていうの?』と聞いたら,しばらくして,『divorce じゃなかったかしら』と答えたんだが,その後,父(名古屋高裁部総括判事)に同じことを聞いたら,即座に『divorce だろ。法律用語だよ。』と言われた。」と。