北口雅章法律事務所

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仏教研究者「ひろさちや」さんの逝去を悼む

昨日(4月13日)の朝刊・訃報欄に,
印度哲学(仏教)の専門家で,仏教の教理を読み解き,素人にも分かり易く解説されている著作で知られる「ひろさちや」さんのことが出ていた。

 

昨今の日本人の平均寿命を考えると,85歳と未だ亡くなられるような年ではない。
死因については,「病気で」としか書かれておらず,「故人の遺志で葬儀は行わない」とあるので,何となく故人の宗教観がわかる。

比較的最近,拝読した「ひろさちや」さんの著作の発行年月をみると,
「[新訳]徒然草」が2012年8月31日(第1版第1刷)
「すらすら読める 正法眼蔵」が2020年3月6日(第6刷)
だった。

 

われわれ読者は,原著者(吉田兼好,道元等)の思想を語った「ひろさちや」さんの解釈・思想を読み取ることになるが,原著者のいわんとしたことの方向性を嗅ぎ取るための参考資料として,いろいろ参考にさせていただいた。

「ひろさちや」さんが,何かのエッセイで書かれていたことだが,昔,「ひろさちや」さんが,インドに出向いたとき,インド人の通訳が
「私は,毎朝『仏陀(Buddha)』になります。」
と言われ,その冗談に気づかず,ムスッとしてしまった,ということを書かれていたことを思い出した。

 もとより,そのインド人通訳は,「ひろさちや」さんが仏教の教理の研究者であることを知ったうえで,「Buddha」が「目覚めた人」という意のサンスクリット語であることを踏まえて,「毎朝『Buddha』になります。」=「毎朝,睡眠から目覚めます」というジョークを言ったのであるが,それを理解してやれず,キョトンとさせてしまったことを反省した,というのだ。

ユーモアのセンスのある「日本の知性」がまた一人亡くなったのは,さみしい限りだ。