北口雅章法律事務所

弁護士のブログBlog

医療裁判における判決言渡の前後

医療裁判にかける弁護士の情熱・エネルギーは、尋常ではない。
通常事件の4,5倍にはなる。
特に患者の生死を分けた医療事故事案や、患者が重度の後遺障害を負ったために将来介護が必要な医療事故事案になると、賠償請求額も相当な金額になり、判決内容・結果いかんによっては、社会的影響も無視できない。これら諸事情に加え、特に「医療側の弁明に明らかな『虚偽』が含まれていると」、弁護活動も俄然、ヒートアップしがちとなる。

現在の名古屋地裁・医療集中部(岩井直幸裁判長)は、医療側の主張を「最大限に」(患者側からみると不必要・過分に)「尊重」するので、満額・満願の判決を得るケースは、レアとみられる。

昨年末に私が受けた国立系病院を訴えた医療裁判の判決の場合も、当方の主張を一部認めたとはいえ、ほぼ「全面敗訴に近い」内容だった。
この場合、訴訟依頼者に申し訳ないことは言うまでもないが、もとより弁護士の面子-面目は「丸潰れ」となるし(弁護士のメンツなどドーデモいいことかもしれないが)、賢明かつ懸命に「顕名で」意見書を書いてくださり、裁判過程でも、ご教示ご支援いただいてきた専門医の先生方の「沽券」にもかかわるので、安易に負けを認めるわけにはいかない。たとえ「裁判による二次被害」にあって、「戦意喪失」してしまった依頼者であっても、「強引に」説得し、控訴に漕ぎ着ける(た)。

そんな中、昨日午後1時10分、別件の医療裁判の判決言渡が予定されていた。
この件でも、高名な大学名誉教授に鑑定書を書いていただき、裁判支援を受けていた関係で、おいそれと負けるわけにはいかず、朝からソワソワして落ち着かない。
法廷での判決言渡には聞きに出向かず、午後1時30分過ぎ頃
事務員に対し「名古屋地裁民事4部に行って、判決書もらってきて。」と指示する。

事務員が判決書を裁判所で受け取り、持ち帰るのをジリジリ待っていると、
事務所に電話が入ったので、受話器を受け取ると、NHKの記者からだった。
「おお、『珍しく』勝てたんだなぁ…」と気分が綻ぶのを自分でも感じる。

事務員が持ち帰った判決書を読むと、
「あいかわらず医療側に甘いなぁ!」という判決内容ではあったが、
予備的主張を認め、認容額も、『珍しく』全面勝訴に近い内容だった。
トータル約4400万円。

 

 

私の姉に対し、「医療訴訟で勝訴。NHKニュースに要注目!」とLINEを送信。このせいか、夜になって、めずらしく、母から電話があった。
よかったねぇ。100万円、認められて。
ハア???

「嗚呼、ウチの母も超高齢化し、ついにボケてしまったかぁ」と愕然としていたが、今朝、中日新聞の朝刊を見て納得した。

私は、目下、中日新聞社を「名誉毀損」で訴えており、いわば「敵性弁護士」なので、私の手掛けた裁判の取扱いについては、なるべく小さくしたいという思惑があるのではないか?と勘繰ってしまう。