北口雅章法律事務所

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「バカチン」と罵倒したら名誉感情の侵害か?

ある著名人(A)が、ある著名人(B)について、公衆に視聴される放送番組の中で、「バカチン」と述べたところ、「バカ」という言葉は、相手を罵倒する表現であり、Bの名誉感情を侵害したとの理由で、BがAを訴えた。

もちろん、Aの「バカチン」発言が、Bの名誉感情を害したであろうことは想像に難くないが、はたして、許容限度=受忍限度を超えたといえるだろうか?

さすがに東京地裁は、「バカチン」という言葉の使用は、「穏当を欠き適切とは言い難い」としつつも、当該発言が「社会通念上許容される限度を超えて」名誉感情を侵害したとまではいえないと判断し、この「バカチン」発言に関するAの損害賠償責任を否定している。
もっとも、「同表現を執拗に繰り返したなどの事情」があれば、別論とも判断しているので、注意が必要だ。

傍から一言いわせてもらうと、いくらAが著名人であり、公開放送での「バカチン」発言であったとしても、Bがご自身の見識とそれに対する社会的評価に自信があれば、「泰然自若」として、Aの「バカチン」発言を笑い飛ばすことができたのではないだろうか。心が痛むのは、Aの「バカチン」発言を「正鵠を射た」ものとB自身が判断・評価したからではないだろうか。

もし仮に弁護士が相手を名指しで「バカチン」といえば、即座に懲戒請求されるのかもしれないが。