弁護士のブログBlog
フランス人のブラックユーモア?
- 2024-07-27
パリ五輪開会式で、生首を手にした「マリー・アントワネット人形」の演出が物議を醸しているようだ。フランス革命勃発直後にフランス国民議会が制定したフランス人権宣言、という自国の歴史に誇りをもつフランス人ならではの演出ではあるが、「悪趣味」、「平和の祭典に、血なまぐさい演出には違和感がある」等の反発も当然に予想された、ところであろう。だが、…
だが、このような演出に対し批判的・否定的な方々に対し、私はお尋ねしたい。
「あなた方は、ダンテの『神曲』を読まれたことがあるのか?」と。
上記「演出」を考えた演出家は、ダンテの『神曲』地獄篇28の一節を念頭に、これをもじったのではないか、つまり、「ブラックユーモアではないか?」と直感したからだ。
Io vidi certo, e ancor par ch’io ‘l veggia,
un busto sanza capo andar sì come
andavan li altri de la trista greggia;
(たしかに見たのだ、まだ目に浮かぶ、
首なきひとつの体が、進む
哀れな亡者の群につらなり)
e ‘l capo tronco tenea per le chiome,
pesol con mano a guisa di lanterna;
e quel mirava noi e dicea: ‘Oh me!’.
(切られた頭の髪をつかんで
提灯(ちょうちん)のように手にさげてゆく。
それはわれらを見、「おお見よ」という。)
(Inferno – Canto〈地獄篇〉 XXVIII〈28〉 118-123)
今道友信「ダンテ『神曲』講義」みすず書房246頁より。