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徳島県立近代美術館は、潔(いさぎよ)いが…

徳島県立近代美術館が、今般、ジャン・メッツァンジェ作「自転車乗り」として、6720万円の税金を投入して1999年に購入した、絵画が贋作であることを認めた。

 

「欺けるから贋作」だというのであれば、すなわち、「専門家一同 (購入時には)見抜けなかった」ところ、購入後、22年の時を経て「贋作者(ベルトラッキ)の告白・自叙伝」が現れるまで、学芸員らさえも欺され続けたのであれば、「贋作者の腕前」を褒めるべきかもしれない。

 

今後の対応を「弁護士と相談」しつつ、購入元(大阪市の画商)の法的責任追及をしたいというが、はたして法的な責任追及は、可能であろうか?

 

売買の目的物(絵画)の真贋は、「売買契約の基礎となる事情」であって、購入者(徳島県立近代美術館)の認識(真作)が真実に反すること(実は贋作)、すなわち、「錯誤」に基づいて購入していたことが判明したのであるから売買契約を取り消せそうなものだが(民法95条)、取消権は売買契約時から20年で時効消滅する(民法126条)。したがって、1999年の購入契約は取り消せまい。
また、その画商が、詐欺したと仮定しても、取消権は時効消滅しているし、不法行為に基づく損害賠償請求権も、不法行為時から20年で時効消滅する(民法724条)
徳島県立近代美術館から相談されるであろう、徳島県庁の顧問弁護士は困るよなぁ…
そもそも贋作を売っているような画商が、今も、倒産・廃業せず、生き続けているのであろうか…?

これに引き換え、私が、贋作を疑っている、府中市美術館が「円空仏」として展示した聖観音菩薩像の場合は、私のようなアマチュアでさえも「欺けない偽作」「素人でも偽作と見抜ける模刻」であるので、「欺けるから贋作」というのであれば、そもそも上記円空仏は「贋作」というに値しないというべきであろう。

 

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