北口雅章法律事務所

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「オウム真理教」関係者の死刑執行について ― 続編 ―

法務省(法務大臣:上川陽子)は,

先般(7月6日),オウム真理教関係の死刑囚13名のうち,7名に対し死刑を一斉執行したが,

今般(7月26日),残る6名全員についても,一斉に死刑執行した,という。

 

 

「オウム真理教」に関する,私の所感は,既に当ブログでも2回取りあげた。
 https://www.kitaguchilaw.jp/blog/?p=3220
    https://www.kitaguchilaw.jp/blog/?p=1670

 やっぱり,「岡崎もだったか。」という以外に,何の感懐も湧かない。

岡崎も,名古屋拘置所に搬送された時点で,法務省(法務大臣:上川陽子)は,執行計画を企図し,着々と準備をすすめていることが予期されていたからだ。ただ,これほど早いとは思わなかった。

個人的な心情としては,あれだけマスコミに露出して,デタラメな論法で教団を擁護した「上祐史浩」と,刑事訴訟法を悪用した教団の顧問弁護士「青山吉伸」こそ,死刑・無期懲役に値するという心情であるが,現行刑法は,実行犯と共謀共同正犯を処罰する体系となっているのでやむをえないところである。

今回の一斉死刑執行を機に,「オウム真理教」とは直接関係ないが,
二つのことを思い起こした。

一つは,
司法試験時代の苦(にが)い思い出。

私の受験時代は,論文試験が超難関であったが,これを通過すれば,
よほどのヘマをしない限りは,口述試験は通過して,最終合格に至ることができる時代だった。

ところが,私は,忘れもしない口述試験のうちの刑事訴訟法で,
ヘマをやらかし,不合格を覚悟した(なんとか最終合格は,できたが・・・)。
私は,大学時代,裁判員制度を構想したことで知られる松尾浩也教授の刑事訴訟法のゼミをとり,こと刑事訴訟法については,絶対の自信をもって臨んだ試験ではあった。

私への,刑事訴訟法での口述試験問題は,
「刑事手続における検察官の役割を全てあげよ。」
だった。
もちろん,試験官の面前で,捜査手続にはじまり,公判手続,控訴審手続,さらに再審手続・非常上告に至るまで,検察官の役割を,とうとうと並べ立てた。
ところが,試験官は,「それから?」,「それから?」・・・を連発するばかりで,
試験官の期待する回答を出すことはできなかった。
そこで,私は,しかたなく断念した。

「もうこれ以上,思いつくことはありません。」と。
と,そのとき,その試験官(当時,司法研修所の検察教官)は,
 いかにも私を見下し,蔑(さげす)んだように,にがにがしいといった目つきでみつめ,
検察官には,『刑の執行指揮』(刑訴法472条)をする役目もあるんだよ。」と述べた
今でも,ソヤツの顔と名前は忘れもしないので,公表してやりたいくらいだが,そのことを思い出すたび,
「それが,ナンボのものじゃい!!」と怒鳴りつけたくなる。
もちろん,死刑執行にも,検察官は「執行指揮」のために,拘置所に立ち会うのが通例のようだ。

もう一つ,思い起こしたことは,
武田泰淳の戯曲小説「ひかりごけ」

うろ覚えだが,
遭難にあって,食料が不足し,人肉を食べた被告人が殺人罪で裁かれる,
といった戯曲だったと思う。被告人が,裁判の最後に,裁判官から,
「最後に,何かいいたいことはあるか?」と聞かれ,
「裁判官は,人間の肉を食べたことがありますか?」
と,聞きかえすシーンが確かあったように記憶している。
「裁判官と裁判を馬鹿にしているのか?」と激昂する裁判官に対して,
被告人は,自分の置かれた立場を理解できない裁判官には,
「自分をさばく資格はない」とまでは表立ってはいわないが,
真の理解は得られない,という諦念の表情をうかべる,といった場面があった。
「麻原彰晃」と,「最後まで麻原による洗脳・呪縛が解けなかった新実智光」を除き,それ以外の死刑囚も,
同じ気持ちだったのではないか,と想像する。