北口雅章法律事務所

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マイコレクション・円空仏(ENKU)の真贋~「円空学会の見解」発表!!

一昨日(9月6日)午後3時過ぎ頃,突如,事務所の電話が鳴った。
事務員が裁判所に出向いていたので,私が電話をとると,
「突然の電話ですいません。円空学会の小島テイジというものですが,・・・」
との声が電話口から聞こえてきた。
(エッ,まさか!,小島悌二[ていじ]先生???と思いつつ,・・・)
「ちょっと古い話なのですが,インターネットを見ていましたら,
 先生のブログに当たりまして,去年のブログで,
 『この円空仏は真作か贋作か』というのを見せていただいたんですが,
 私の目から見て,ちょっと本物のような感じがしたので,
 ちょっと見せていただけないかと思いまして・・・・」
と言われてた。
「小島先生,ってひょっとして(円空の)本(注:小島悌二『円空仏入門』まつお出版)を書かれている先生ですか?」
と尋ねると,
「そうです。・・・でもしあれでしたら,一度(マイコレクションの円空を)拝見させてもらえないかと思いまして・・・」との連絡であった

ちょっと,ビックリ!!
是非是非どうぞ,ということで,
今日(9月8日)午後2時,小島悌二先生(円空学会理事長)と,
前田邦臣さん(円空学会常任理事)ご夫妻を,わが事務所にお迎えすることになった

当然のことながら,昨日のうちに,自宅から当事務所に,
「これぞ円空の真作ではないか?」と私が内心信じてやまない
“珠玉の”円空仏・マイコレクションを移動させておいた。
いよいよ,「なんでも鑑定団」ではなくって,
「円空研究の権威」の方々の鑑定を仰ぐことになった。

妻とは事前に「賭け」をした。
もし一体でも真作があれば,私の勝ち。全て贋作ないし模作であれば,妻の勝ち。
 私の鑑識眼を軽く見て,「本物などあるわけがない!」というのが妻の見解だ。)

さて,鑑定結果は如何に??

 

第1問 ブログの観世音菩薩の真贋はいかに?

私は,いきなり小島先生の目の前に「お目当て」の「観世音菩薩像」を差し出した。

 

「これでしたか。」と言って,じっと見つめる小島先生。

結論は,残念ながら,贋作!!

小島先生曰く「本物を使って型取りされています。ブログの写真を拝見したとき,書面の写真は確かに本物に見えました。本物と同じですから。裏の写真は,わずかに梵字(墨書による背銘)の書かれているようにも見えましたから,あるいは?・・・と思って確認しに来ましたが,背銘は書かれていませんでした。民家に残された円空仏は原則,背銘=梵字が入っています。それと,仏像を持ったときの手触りがツルツルしていて,木の感触ではない。これは合成樹脂の感触です。部分的に尖ったところが擦れて白くなってますから,やはり合成樹脂で作られていますね。」と。
実は,私のこのコレクションを模作と鑑定したのは,「名古屋市博物館の」学芸員だが,彼にちょっと反省を求めるべく,彼の鑑定根拠が極めて薄弱であったこと,この意味で,私が指摘した部分もあながち外れではいなかったことを,(私自身の「備忘録」として)ちょっと補足しておきたい(多分,私のこのブログなど読んでいないだろうが。)。

まず,名古屋市博物館の学芸員には,本観世音菩薩像のオリジナルは,高田寺の如来形座像だと鑑定されたが,この見方は,やはり論外であった。
そもそも,名古屋市博物館でも開催された円空仏展の図録には,
「如来座像」として,背面の梵字が写真入りで掲げられているが,
この円空仏は,「如来座像」ではなく,「観世音菩薩座像」である。

この座像も背面に記された梵字は,
前田さんに見せていただいた富山市・猪谷関所館の
図録「祈りを彫る 円空」に出てくる観世音菩薩像の梵字と同じである。

すなわち,一番上の梵字が「ウ」=「最勝の」(=最もすぐれている,の意)
二番目の梵字が「サ」=「観音菩薩」であって,
これをみただけで,観世音菩薩像だとわかる,と御教示を受けた。
そこで,念のため,小島先生に,メモ用紙に,その梵字を筆記していただいた(下掲・メモ参照)。

そして,私のブログでは,富山と下呂で発見されている,などといい加減なことを書いてしまったが,同種の観世音菩薩像は,全国に500体ほど発見されている,とのこと。
つまり,マイコレクションの観世音菩薩像は,その500体のうちの1つのレプリカに過ぎない。
背刻の襞(ひだ)は,3本が通常で,高田寺の前掲・観世音菩薩の襞が2本であるのは,像が小さいから2本にとどめたと思われるとのことで,背刻(仏像の背面に,着衣の襞を筋を入れる)の後に背銘を墨書する,とのこと。
レプリカは,本物から型取りするので,形は全く同じにできるが,背銘までは真似できないので,背銘が書かれていないものが殆どである,とのこと。

いや~,勉強になります。(つづく)