北口雅章法律事務所

弁護士のブログBlog

南淵明宏著「病院で起こった不思議な出来事」

南淵明宏先生は,
いろいろな意味で有名な心臓血管外科医だ。
朝日新聞にエッセイを連載されていたこともあるし,
医療訴訟に携わっていると,いろいろな場面で,
 南淵先生のお名前に出くわす。

昔,産科医療訴訟に携わる上で必要な,産婦人科学の基礎知識について
手ほどきの講義を受けた,かの長屋憲先生(産婦人科医)が監修された
カノ医療マンガ「ブラックジャックによろしく」(佐藤秀峰著)に登場する,
 神(かみ)った”心臓血管外科医のモデルが南淵先生だ,とうかがった。

A「オペを続けるぞ・・・・」
B「先生・・・ここは心臓を止めて人工心肺に切り替えましょう。
  また心室細動が起こらないとは限りません。
  このまま拍動下で手術を続けるよりは・・・・」
A「確かに人工心肺にのせれば心室細動を心配する必要はない・・・
  だが患者は肝硬変を併発している
  人工心肺を使えば肝臓がやられて死ぬ危険ははるかに増す・・・・」
B「安全策です!!
  ここで人工心肺にのせたからって,
  誰が先生を責められますか!?
A「俺が責める
  人工心肺は使わない・・・
       俺は・・・・
       俺の決断を信じる・・・・!!

C「この人は・・・
  医者だ・・・・」

 

(注:作者の佐藤さんへ,
   ここでは,主人公の研修医Cに
  「この人は・・・プロだ・・・!!」って言わせるべきです。)

 

ってな感じの南淵先生が語る「病院で起こった不思議な出来事」だから,
「虫の知らせ」,「勘が当たる理由」,「死を告げる音」・・・
と,本の目次の標題をつらつら眺めただけで,だいたい中身の内容は想像がつく。
南淵先生は,ウソを語るような人物ではない,であろう。
ってな訳で,だいたい本の中身の予想がついていても,ついつい興味本位で買ってしまう。

なるほど,やっぱり・・・,あるんだなぁ・・・と思う話が並ぶ。

手術後の退院を控えた70代の女性に,見舞いに来たご主人。
が,病院を訪れたそのご主人は,
実は,その前日,脳出血のために急逝されていた・・・・とか。

80歳を超え,定期的に外来受診に来ていた男性患者Tさん。
ある日,Tさんに地下鉄の中で顔を合わせが,
忙しくて,笑顔で黙礼だけしかできずに別れた。
・・・ってことを,当日,看護師に話すと,彼女は驚いた様子で,
「先生,知りませんでした? Tさん,先日,膵臓癌で亡くなられたんですよ。」

 

実は,この類いの話は,わが業界でも聞いたことがある。
Nくん(弁護士)のもとへ,ある方が,
事業に失敗したか,連帯保証のためだったか,
債務整理の相談に来ていた。
Nくんは自己破産を勧め,申立ての準備を進めていたところ,
ある日,突如,首を締め付けられるような衝撃を受けた,とのこと。
後で分かったことだが,ちょうどその頃,
Nくんのもとへ相談に来ていた方が,首つり自殺された,と。
無信心のNくんも,さすがに青ざめ,お祓いに行ってきたとのこと。

 

ちょっと,話がそれるが,

私も,超常現象(?)を経験することがないではない。

最近,たて続けに不本意な高裁判決を受けた。
①医療過誤訴訟,②行政処分取消訴訟,そして,③国家賠償請求事件
もちろん,いずれも最高裁へ上告受理申立てのステップへと進む。
この場合,相手方の数1名に6を加えた数,つまり合計7通の
上告受理申立理由書を高裁に提出する。
この書面を提出するときが「ミソ」だ。

普段,裁判での主張書面(準備書面という。)を作成し,裁判所に提出するときなどは,
事務員に弁護士印を(私の代わりに)押させる。

しかし,上告受理申立理由書は,一般の主張書面とは違って,
原則として,私自身が,「気合いを込めて」弁護士印を自ら押捺する。
それとともに,上記①の医療過誤事件と,②の行政処分取消請求事件のときは,
最高裁判事の面々の顔を思い浮かべつつ,
「第二小法廷に行け!,絶対に第一小法廷に行くでないぞ!!」
と念じて,弁護士印を押捺した。
なんと不思議なことに,前記①②のいずれの事件も,
最高裁第二小法廷から記録到着の通知書が届き,いずれの事件も同第二小法廷に係属した。

そして,その後,

宇賀克也先生が第三小法廷の最高裁判事に就任された。
前記③国家賠償請求事件は,愛知県が相手方の行政手続法の理念に絡む事件だ。
もちろん,上告受理申立理由書を起案し,仕上げの弁護士印を押捺した際は,
「いいか,絶対に第三小法廷だぞ!」と書面に向かって気合いを入れて,弁護士印を押捺する。

すると,昨日,第三小法廷から,記録到着の通知書が届いた。

これを単なる「偶然」とみるか,
念力が効いた!!」と考えるかは,人生観の問題である。

南淵先生も,前掲著の中で述べておられる。
曰く「患者さんの生きたいという切なる願いと,私自身の助けたいという強い思いが合わさって,大いなる力が発動することがあります。このことによって,絶望的な局面が打開されて,奇跡的に手術が成功するということも,決してまれではなく起こるのです。
 私はそういう経験を何度もしています。」と。

が,わが業界では,最高裁に裏切られることの方が圧倒的に多い。
最高裁が「裏切らなかった」という経験は,私の場合,
過去何十件もの上訴事件のうち,これまで,わずか2件だったもんね。