北口雅章法律事務所

弁護士のブログBlog

ある新聞記者からの電話

突如,新聞記者のOさんから電話(12月12日)。

「先生,今日さきほど,川崎市で,ヘイト規制条例が成立しました。ついては,一言コメントください!」

「ボクは,何をどのように規制したのか知らないんで。そもそも,条例の文言を読まないことには,コメントしようがないじゃないか。」

「ちょっと,川崎市のホームページを開けてください。新条例がアップされてますから。」

「どれどれ・・・,『本邦外出身者に対する不当な差別的言動…』ってやつか。」

「それです。」

「どーせ,キミの会社は,このような条例に対しては,批判的なコメントが欲しいんだろう?」

「ヒヒヒ・・・。明確性の原則に反しませんかねえ?」

「いやァ―,『著しく侮辱的』ってあるが,『侮辱』自体は刑法にも規定があるんで,不明確とは言いにくいよなァ・・・。まあ,でも,市長の『勧告』ってのがくせ者で,それが濫用されると,政治的な言論を委縮させる可能性があるんだよね。それに,逆に,市長がこれを抑制的に運用すると,『なんで勧告しないんだ!』って市長が突き上げを受けたりするんで,社会的な対立を誘発する可能性があるんじゃないかなァ・・・」

「なるほど,そこらあたりで,まとめてみますので,原稿が出来たら,またご連絡させていただきます。」

 

・・・しばし中断した後・・・

 

「先生,原稿できました。今から読み上げます。
『北口弁護士は,「・・・・。」と(この規制条例に)否定的だ。』・・・」

「ちょちょっと,待ってよ。『否定的だ。』なんて書かれちゃうと,右翼と誤解されるではないか。ボク自身は,このような条例自体には,確かに『否定的』ではあるんだが。・・・」

「だったら,『否定的』って書いたっていいじゃないですか。」

「いやいや,ボクは,本来,差別的言動の問題などは教育や行政指導で対処すべき問題であって,やたらと刑罰法規をつくると社会が委縮しちゃうんで,規制立法には反対なんだ。この意味で,規制条例をつくること自体には否定的なんだが,そのへんの脈絡を無視して,『否定的だ。』と書かれてしまうと,読者にニュアンスがうまく伝わらなくって,『あいつは,右翼だ』とレッテルを貼られてしまう。せめて,『北口弁護士は,「・・・という可能性があるのではないか。」と懸念を示した。』くらいにとどめてといてくれんかなあ。」

「はい,わかりました。」

 

・・・その結果が,コレか。